2016年10月18日

美術教育学会(滋賀大会) 自分の発表 その6

発表4.JPG
世の中は、今やオープンクエスチョンです(笑)
アクティブラーニングの視点からいっても時代はオープンクエスチョンです。
「江戸幕府を作ったのは誰ですか?」「はい!徳川家康です」とか
「酸性やアルカリ性を調べるのは何を使いますか?」「はいリトマス試験紙です」
・・・・というようなクローズドクエスチョンの方が素晴らしいなんて言う人はイマドキ珍しくなってきたのではないでしょうか。
しか〜し
タイトルは「3つめになぜかクローズドクエスチョン」・・・
どういうことなんでしょうね。

前回までの発問による活動で、1,2年生なら授業がそこで終わってしまうかもしれないし、対話による鑑賞でもVTSでもあそこからは別の作品に移るかもしれないと書きました。
中学3年生の鑑賞で、もう一歩前に進める私の秘策(笑)が、このクローズドクエスチョンということになります。
kanshou.jpg

ここまでの発問を振り返ってみましょう。
一つ目は「何が見えているか」「何が描かれているか」
二つ目は「○○についてどう思うか」「それはなぜか」「他の人はどうか」
つまり生徒たちは、自分に見えたものを言い、自分が発見したことを言い、自分が推測したことを言い、自分がそう考えた根拠を言い、級友の意見に対する自分の意見を言ったということになります。
ここで
「もう何か他に意見はないか?」
と無理やり意見を促しても手が上がらないか、無理にひねり出したような意見になることが多いです。

この状態を私は「主観の飽和状態」だと勝手に命名しています。
(命名するのが好きなんですwww)
ずっと「自分が・・・」「自分の・・・」で、ここまで来てしまいましたからね。

この状態を打開するブレイクスルーとして、「ああそう言えば、その切り口からはまだ考えていなかったな」という角度でクローズドクエスチョンを投げかけるという訳です。

整理しますね。
@種類
・グループ対象のClosedQuestion
A役割
・主観の飽和状態に対するブレイクスルー
・次の大きな課題に向けた助走や伏線
BHiddenCurriculum
・これまであまり発言できなかった生徒も小グループで自然に話し出す。
・問われてみて初めて「その角度からはまだ考えていなかった」ということに気づき、思考が再起動する。


長くなってきたので、実際にどんな投げかけをして、どうなったかという実践報告の部分は明日に回しますね。
posted by kazyhazy at 20:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 切り口 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年09月24日

授業改善推進のために思うこと(7)

美術科あるいは美術科教師というものを
色々な切り口から捉え直してきました。

今日は美術の先生と
・・・・・他教科の先生の先生の話。

これも夏の学会のパネラーで少し触れた話なんですけどね。
2011gakkai_05.jpg
例の、左手の、あの写真の時です。
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さて・・・
生徒から「教え方がうまい!」と呼ばれている先生をみると
「インテリアコーディネータみたいだ」なんて思います。
できあがった家の中を住みやすくするために
色々なモノの配置を考え、バランス良く提示し、使い勝手の良い住環境を整えてくれます。
(我が家を担当したインテリアコーディネータもそう言う人でした)

教え方の上手い他教科の先生も
決まった学習内容や、その日の目標に達するように
時間配分や発問の提示が秀でていて、生徒の学習環境をうまくまとめ上げていることと思います。

しかし美術科には
「何年生の何学期には、全国津々浦々必ずこの授業をしている」
というような王道の内容はありません。
ですから、インテリアコーディネータの仕事をする前に、まず家を設計するところから始めないといけません。そして基礎工事の仕事も、材料発注もしないといけません。

授業で作品を作る過程の話ではないですよ。
まだ授業自体を作りはじめる段階の話です。

何時間かけて、どんな活動をして、どんな興味付けをして、どんな学びがあって、どこでどう評価して・・・などの々な要件を満たした授業を一から建築します。

家の中のコーディネートをする段階は、家が出来上がってからやっと始まります。
つまり授業を作り上げてやっと発進できるのですが
上手に進行できるかは次の段階のミッションになるということです。

実技教科と基礎教科(5教科)との対比の話なのかな?
・・・と自問してみて思ったのは、
「違うぞ。美術とそれ以外の8教科との対比じゃないのか?」でした。

どうやら美術だけが異色のようです。
posted by kazyhazy at 22:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 切り口 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年09月19日

授業改善推進のために思うこと(6)

「授業改善推進のために思うこと」というタイトルで始めたシリーズですが、
最近チョット「違うなあ」という気になってきました。

美術教育の現場教師をどう想定して次を考えるか

・・・というような事をまとめたかったので、
もう少しそれに近い言葉にすれば良かったですかね。

さてこれまでの記事で、
■展覧会に出品される児童生徒の作品から類推できる現場の様子
■世代別にかかえる問題の違い
■地域による研修環境の差
・・・・から色々な「想定」の材料を取り出してきました。

今日はちょっと違う観点から考えてみます。
(といっても重複する部分も多いのですけどね)
2011manabi3.jpg
みなさんは授業を考案するときに
美術が得意そうな生徒を想定して、画家を養成するかのように計画するでしょうか。
それとも平均的な生徒を想定して課題の難易度を調整するでしょうか。

私はどちらかというと美術に無縁の生徒をターゲットにして計画を始め
その後で、できれば得意な生徒も満足できるように工夫を加えるというスタンスです。

世の中は反対の授業が多いですね。
「絵を描きなさい」と画用紙を渡して、得意な子はそこそこ描けているので、描けない子を机間巡視でフォローする。しかもこういうのを「適切な支援」なんて呼んだりすることは無いですか?
これは、そこそこ描けることを標準と想定して、描けない子にも満足して貰えるように手を加えるというスタンスですよね。

教員研修に話を戻します。
演台から研修会場を見るとき、まるで授業をしているような錯覚にとらわれます。
参加されている先生方を生徒に喩えるなら、これはもう非常に優秀な生徒です。
義務教育でもないのにワザワザ遠いところから参加する熱心な生徒です。

つまり美術が得意な生徒ばかりを相手に授業をしているようなモノです。

美術に無縁で苦手意識を持っている生徒を想定して授業がしたいと思っている私にとっては
教師の研修会でも「今この場に来ていない、来たことがない、来ることが出来ない」先生方と出会いたい、出会って話を聞きたい・・・・なんて思ったりします。

授業改善を全国的、全体的に推進するためには、いつも研究会、研修会に来ている熱心で得意なメンバーだけで話が盛り上がっても広がらないのかも知れませんね。
どうすればよいのか難しいですが、今この場にいない人のことを一番に考えなければいけないんでしょうね。
posted by kazyhazy at 22:22| Comment(1) | TrackBack(0) | 切り口 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年09月16日

授業改善推進のために思うこと(5)

美術教育を推進するために、あるいは研究会を意義深いものにするためには
教師観をもって
「今我々はこういう状況だから次にどうしよう」と考えるべきなんじゃないか・・・という感じで書き始めたこのシリーズ。
レッジョエミリアの記事が続いたので、少し間隔が開いてしまいました。

今日は5回目ですね。
前回は、教師の年代別に、現状を大きく3つに分けてみました。
今日は別の角度で美術教師のことを考えます。

blog_chugakoubijutu.jpg
上は北海道の山崎先生がまとめてくださっている日本の中学校美術科の総決算。
これぞ、「ザ・中学美術」という感じのサイトです。

赤線で囲まれたところには地域リンクがあって、
全国の様々な活動が地域別に紹介されています。

ここで気になるのは、地域のリンクである地方を開いたときに
「あれ? ○○○県は無いのかな?」
という場合です。

単にまだ拾い上げていないだけ・・・・なら良いのですが
単にデジタルでネット発信をしていないだけ・・・・でも良いのですが
そうじゃない事って無いのでしょうか?

先日こんなことがあったそうです。
今まで全く参加の無かった県から、ある美術の先生が会議にやってきました。
その地方の全県に出張文書が出してあり、たまたま目にしたその先生が「出席義務のある会議だ」思って参加されたそうです。

その先生曰く
「文書や案内を送っていただいても、本県にはそれを受け取るべき組織が存在しないから、これまでは宛先不明のまま消えていってたのだと思う」

そう言えば全国的な研究会や大会で、その県の先生と出会ったことがないです。
その周囲の県には知り合いも居るのに、その県の先生や活動に全く無知だったことに気づかされます。

さらに、その先生曰く
県の外に出て初めて知りました。よその県では色々な研究会が活発に動いているんですね」と。

そう言えば別の県で研修会を頼まれて、そこの組織で話し合いをしていたときに
「すごいですね。滋賀では毎年研究テーマを設定して活動しておられるんですか」と言われて驚いたのを思い出しました。

「生き生きと主体的に取り組み、イメージ豊かに構想し、粘り強く素材に向かう生徒を育む感性の教育を目指して」・・・・・みたいなロクでもないテーマを掲げる研究会をイジメるようなことを書いてきた、性格の悪いこのブログの作者ですから、

「へんてこな研究テーマだったら意地悪してやる」
・・・なんて思っていたら「研究テーマがあるなんて凄いですね」といわれて拍子抜け。
ああ、そうか。地域にはそれぞれの実情があるんだな、と再確認。

研究の進み具合や焦点がそれぞれ違う・・・というレベルではなく、皆が同じフォーマットでやっているのでさえない、ということに気づかされました。

美術教師の現状を、どう想定するか・・・・というこのシリーズに取り上げるべき現状だと思いました。
posted by kazyhazy at 23:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 切り口 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年09月08日

授業改善推進のために思うこと(4)

児童観、生徒観をもって、
「今までこんな活動を経験してきた生徒だから・・・」
「この部分が課題で、次の学びに期待できるから・・・」

こんな授業をしました。あるいはこんな授業をしよう、というのと同様に

美術教育を推進するために、あるいは研究会を意義深いものにするためには
教師観をもって
「今こういう状況だから次にどうしよう」
と考えるべきなんじゃないか・・・という感じで書き始めたこのシリーズ。

今日は4回目ですね。
前回は、地域の応募展に寄せられた作品から、現状を大きく3つに分けてみました。
別の角度ですが今日も3つに分けてみます。
2011gakkai_04.jpg
(これは学会のパネラーとしても話題に挙げたことなのですが)
最近聞いた話です。
指導要領や教科書が変わるときには各都市で教育課程研修会が行われますよね。
そこで、年配のベテラン美術教師陣の間でこんな会話が交わされたそうです。
「わしらはもう残り少ないし、指導要領が変わろうが、これまでと同じ授業をするだけやなあ」
「そうそう。いまさらスタイルは変えられへんしなあ」

・・・だそうです。年配教師の本音のようですね。

自分もそこそこの年齢なので人ごとだと笑っていられませんが(笑)

■まず年配のベテラン陣に結構こういう人が多い・・・という現状が理解できます。
 確かに古き良き時代、美術が2時間連続だった時のような重厚長大な実践を時々見ます。
 (もちろんベテランらしい素晴らしい取り組みもあるのですが)

次に20代の若手はどうでしょうか。
徐々に採用が増えてきたと言っても、本県では格段に少ない20代。
美術の授業が減りつつある時代に小中学生だった彼ら。
一緒に勉強する同年代の美術教師は少なく、それどころか配置された学校に「ひとり」ということもザラ。

■我々が若い頃に仲間と研究したり、同年代と切磋琢磨していたような環境とは全く違うところで苦労しているのが若手の現状だと捉えることが出来ます。
よほど向上心が強く、部活などで忙しい若い時代にも関わらず単独で研究会に飛び込んでいける人しか「授業もどき」の魔の手から逃れることは出来ないんじゃないかな。(たぶん小中学校時代にもそういう授業しか受けてないと思うし。)

次に中堅層はどうなんでしょう。
これはもうスパッと二分されるんじゃないでしょうかね。
(統計を取ったわけではないですが)
ぐんぐん力を付けてくる人と、まったく顔を見なくなった人。

運動部にのめり込んだのか、学年主任や進路主任で名が売れてしまったのか。
理由は分かりませんが、年齢的にも慣れてるぶん授業は小手先でもそれらしくできてしまう。(ここが大問題)
前述の「大ベテラン年配陣」の予備軍ですね。

学校としては私なんかより、よほど必要とされる便利な人材かもしれないですけどね。

■中堅層は、その地域の取り組み次第。
本県のように研究組織がかなりバリバリやってるところでは、段々その価値に気づいて食いついてくる人が出始めています。それでも少ないですが。
滋賀のようにやっていても、ナカナカままならないのだから、そう言う環境に恵まれないと状況ならかなり厳しいと思います。

市や県の研究会が動いていないのなら「学び研」のような全国レベルの研究会という手もあるのですが、そういうのに「行こう」と思える人なら苦労はないですよね。
posted by kazyhazy at 23:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 切り口 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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