2017年02月08日

展覧会をどうするのか(20)

前回、自分の学校の展示を披露して「ひと区切り」つけたつもりだったのですが
「作品がほとんど写ってないじゃないか」
というお叱りをいただきました。
特に「自分らしいツノが生えてきた」の方ですね。
・・・という訳で、授業者の許可をもらって展示されている作品を大放出しちゃいます。
(全部ではないのですが)
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画像をクリックすると拡大できるんですが、「制作意図」の用紙も読めてしまうかもしれません。
生徒の名前が判読できるようなら「取扱注意」でお願いします。

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本当にどこかの動物から生えていてもおかしくない様な渋い色合いや凹凸のある作品から
一年生らしい鮮やかでカラフルな作品までバラエティに富んでいます

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この授業が生まれるまでの経緯はブログで夏ごろに公開されていました。
初任者Yさんが授業を作っていく過程を「親心」のような気持ちで見守ってくださった読者の方々「あの授業のその後が気になる」と言ってくださっていました。

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指導者の指示通りの「同じような作品」が展示で並ぶ問題も、展覧会の過去記事で扱ってきましたが、ご覧のような有様でひとつとして同じような作品はありません。
初任者が一学期に始めたオリジナルの授業ですから、私の方も「一人一人が主題を生み出す過程がちゃんと設定されているか」を丁寧に見たつもりなので、それが生かされたのなら嬉しい限りですが・・・
実は現在3学期にやっている表現の授業(まだ紹介していません)にも良い影響を及ぼしているようなのです
今日の授業後の成果を見ながら、そんな話で放課後は盛り上がっていました。

posted by kazyhazy at 21:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 展覧会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月06日

展覧会をどうするのか(19)

展覧会をどうしていくべきなのかを考えるために
素晴らしい取り組みを始めている方々を紹介しました。
最後に、自分がいかに「できていないか」自戒の意味を込めて暴露したいと思います。
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美術室前の廊下なんですが、2学期に終了した作品のミニ展示会を開催中であります。
右の奥の方にもう一列机が見えると思います。
あちらの方はこれです。
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未来に発見される我々の化石展。
こんな作品が展示されています。
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一応は生徒が書いた「制作意図」が作品についてます。
そこだけは「ちゃんとしよう」と思ってましたが、それ以外は・・・。
大規模校なので全員展示はできないし、生徒が展示方法を考えたわけでも無く、等間隔に並べられていますから、以前の記事を書く時も反省しながら書いてました。

良いことだけを書いているわけではなく
ちゃんと恥ずかしいことも披露する良心的なブログだということで
お許しください。


posted by kazyhazy at 22:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 展覧会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月05日

展覧会をどうするのか(18)

すでに有名なので、知らない人のために書きますね。
CGAT展というのがあります。
美術の時間展とともに、ある意味で展覧会の進化系ともいえると思います。
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展覧会自体は2012年以降ほぼ毎年開催されており、大阪教育大学の佐藤先生を中心に、大阪の小中の先生方で運営されています。
何がどう違うのかというと、作品だけではなく図工美術の授業の狙いを授業者がポスター展示しているところではないでしょうか。
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結果としての作品を展示するだけの展覧会ではなく、経過や意図を伝えようとする意思のある展覧会であったことが注目に値すると思いました。初めて開催されたときも見せていただいて
「なるほど!こういう考え方で展覧会の意味を模索しないといけないのか」
と感激したのを覚えています。
なので、中学校美術Q&Aという研究会でもその取り組みを発表してほしいとお願いしたぐらいです。

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「CGAT」は,Comfortable Gathering of Art Teachersの頭文字をとったもので、図工美術の先生の気楽な集まりという意味だそうです。美術教師の人数が減り、交流や相談ができなくなってきた昨今に意見交換やワークショップをできる場を提供するのが始まりでした。
ですから、展覧会だけではなくワークショップも熱心に行われているそうです。CGATのホームページ(リンク)では、活動記録のページに23回ものワークショップの様子が紹介されています。

ホームページではワークショップのお知らせと申し込み方法も記載されていますので、興味のある方はご覧になってください。
当然!このブログよりも詳しい内容が分かると思います。画像もたくさんあって雰囲気がつかみやすいと思いますのでご参照アレ。

(今日のブログの画像は大阪市の仁張先生とCGATホームページから画像をお借りしました。)
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2017年02月02日

展覧会をどうするのか(17)

今日は愛知県の藤原智也先生の実践です。
これもFacebookに紹介されたものを転載する許可をいただいたものです。
ある園から依頼された藤原先生は次のように園の先生方にお願いしたそうです。
「子どもに『造形展へ来てくれるお客さんに、作品をどう見てもらいたい?』と問いかけ、子どもがしたい展示を実現する部屋を一つ作って、そのための素材を提供したりお手伝いをしたりしてください。」
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この園の先生方は、当初は
「子どもが展示なんてできるのかしら?」
と大きな不安を持っておいででした。しかし、子どもたちが相談をしながら、時には摩擦が起きながらも、自分たちなりの主題を持って共同しながら活き活きと展示空間を造形していく姿に、驚いたそうです。

藤原先生は、従来の幼児保育の造形展で次のような問題意識を感じておられました。
近似した絵が、区画整備されたかのように縦横キレイに並べて展示されていたり、テーブルクロスなどでキレイに整えられた台の上へ、均等に立体作品と名札が置かれている違和感。
そこでは作品もさることながら、造形展が「大人(保育者)の視点で作られ」、「大人(保護者)の視点で消費されている」企画のようで、厳しく言うと、【大人が楽しむための下請作業員】として【子どもが使われている】かのように感じる
こともあったそうです。
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造形展に足を運ぶと、多くの先生方が
「もっと子どもたちが秘めた力を信じて実践をしていきたいと、子どもの姿に気づかされました」
とおっしゃっていたそうです。
子どもを、大人の視点から「大人の価値へと誘導する」のではなく、子ども自身の視点から得られた造形的な価値("気付き"、"驚き"、"やりたいこと"…)を先生が伸ばし実現していく指導・支援へとシフトしていく第一歩として期待が持てると書いておられました。
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藤原先生は・・・・
造形展が「子ども自らが自分たちの視点で作り」、そして「その子どもの視点から生まれた価値を保育者と保護者らが共有する」企画となり、【子ども理解】と【無条件の承認】を園内外で広げていく機会になればと願います。そのために、どのような造形展がありえるのか、園の先生方と一緒に模索していきたいと思います。
・・・と結んでおられましたが、今後の展覧会を考えるこのブログに大きな示唆をいただきました。

先日の北川先生の取り組みでも、似通った作品を並べてしまった小学校の先生に「気づき」があったという話題がありました。中学校にも同様の課題を見かけることはありますが、「構図までが同じというのは中学校では少ないんじゃないか?」と油断しているところがあります。
自分はまだまだだなあ・・・なんて実感します。
例え主題生成や構想面の授業を怠らないことによってバラエティに富んだ中学生の作品が生まれたとしても、私たちはその作品を区画整備されたかのように縦横キレイに並べて展示してしまっているからです。

posted by kazyhazy at 21:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 展覧会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月31日

展覧会をどうするのか(16)

今日は大阪の北川綾子先生の取り組みを紹介します。
すでに第一報はFacebookで紹介されているので見た記憶のある方もいるかもしれませんが、ご本人に詳細を聞かせてもらいましたので、経緯なんかも紹介していきたいと思います。
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この展覧会は、中学校区のだけの幼小中作品展であるという特徴があると思います。こういう取り組みは全国どこででも見られるものではありません

数年前に校区が荒れた時に小中連携が強化され、様々な交流や研修が持たれたそうです。出前授業をしたり子供のリーダー研修をしたりと教師も生徒も意識が高まり、少しずつ落ち着きを取り戻していきました。
北川先生は市内美術部展を立ち上げた人物として校長からの信望もあり、「そういう人材がいるのだったら実施できるのではないか」とばかりに各校園長たちが結束して企画を立ち上げたと聞きます。
管理職が力を合わせれば話が早いです。段取りなどもスムーズだったようです。
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こうして合同展覧会が開催されることとなった訳ですが、この展覧会にはもう少し特徴があります。
保護者や、地域の方が見にきたときに、誰の作品がどうだ…というふうに見て欲しくないという思いから作品は無記名なのです。
それでも、子供が見に来たときに「私の作品もちゃんと飾ってくれてる!」「私もこの地域の一員だ」と感じてもらえるように、また「こんな作品を作る子たちが地域にいる」「これだけの子供が地域にいるんだ」と感じてもらいたくて、
「全員展示にしたい」
北川先生は主張されました。
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「選ばれた作品だけ飾るのは優劣をつけるってこと」なので、それをするなら「私はやらない」ってくらいの勢いで言ったそうです。
もう北川先生には感服してしまいますね。
全員展示にすると、小学校の作品なんかには「ひとクラス分全部が似ている作品」になりがちなのは全国どこにでもある話で、今回も少しその傾向があったそうです。ただ、そのことが先生方の話し合いの機会を生んだり、違和感に気づく小学校の先生が居たり、という収穫があったのも「この全員展示」の賜物だったそうです。

無記名って所はなかなかの冒険ですね。
生徒の自己表現である作品が無記名というのに抵抗のある先生も居らっしゃるかもしれません。
無記名で全員展示だったら「指導者の授業紹介」であったり「学校の取り組みアピール」になってしまわないかと心配される先生も居らっしゃるかもしれません。
けどこれは「第一回合同展」なんですから、ここまで実現できたこと自体が快挙だと思いますし、今後に改良の余地はいくらでもあると思います。

いまちょっと思いついたのですが、名前のラベルを付ける代わりに「子どもが画用紙の隅っこにサインを必ずいれる」ってのはどうでしょうかね?
それと、作品にラベルはつけるけど作者名は無しで、子どもが書いた表現意図や表したかったことだけを載せるってのもどうでしょうか?
(すいません。ただの思い付きで)


posted by kazyhazy at 22:27| Comment(2) | TrackBack(0) | 展覧会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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